第十番 万松山 大慈寺 (曹洞宗) 08.11.05















俯瞰して分かることがある。
「第十番大慈寺」の後背の墓地から寺の屋根を眺めるとその向こうの高篠山や大棚山の間の山里に第一番から第五番までの札所が点在していることがよく分かる。下の写真は、羊山公園から撮ったもの。「第十番大慈寺」は左の山麓に、ニ、四、五番は右の山里にある。
午後の太陽を受け、万物光り輝いて、のどかな横瀬の農村風景である。

「第八番西善寺」、「第九番明智寺」と同じく本尊の聖観音は恵心僧都の作と言われている。
恵心僧都(942-1017)は源信の通称で、「往生要集」の著者。
浄土教の核たる人物の一人。
その恵心僧都の手になる観音様がなぜ禅宗の寺であるこれらの札所にあるのか、その理由については「第八番西善寺」で書いたので、繰り返さないが、15世紀、札所のスポンサーである地主、武士たちの信仰が浄土宗から禅宗に変わったからということ。「泣く子とスポンサーには勝てない」のだ。

「第十番大慈寺」には、見ておきたい坐像がふたつある。
一つは参道入り口左に座する延命地蔵。
どう見ても笑っているとしか思えない。
笑っているがオーバーなら、微笑んでいると言い換えようか。
つい気安く悩み事を打ち明けてしまいそうな、包容力のある笑みなのだ。

もうひとつは、本堂内の「おびんづる様」。
自分の体の悪い所と同じ部分を撫でて祈れば治癒するというのだが、他に参拝客もいなくて、そういう光景には出会わなかった。
撫でるには少し像が離れているし、柵が邪魔のようでもある。
撫でてなんぼの「おびんづる様」の座す場所としては、不適当ではなかろうか。

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