第三十四番 日沢山 水潜寺 (曹洞宗) 08.11.30


結願寺である「水潜寺」には、穏やかな空気が流れている。
巡礼満願を達成した巡礼者の安堵の気持ちが漂っているからだろうか。
秩父札所の結願寺であるだけではなく、西国、坂東を含め、日本百観音霊場の結願寺であることは、いろんな所に現れている。
本尊の千手観音の脇侍には、西国を意味する西方浄土の阿弥陀如来と坂東を意味する東方浄瑠璃世界の薬師如来が座し、この三尊を拝めば、百観世音巡礼の功徳が得られるという。
本堂前の「百観音御砂の足型」の上に立って合掌しても同様の功徳がある。








観音堂の隣の讃仏堂は、納経所を兼ねているが、この入口脇には、結願した巡礼者の金剛杖が奉納されている。
他の札所では見られない結願寺ならではの光景と言えよう。


その納経所でいただいた「水潜寺」の御朱印。
「日本百番結願霊場」の印が押してある。








その名も結願堂の前には、「百観音御砂の足型」があり、ここに立って回す「百観音功徳車」もある。


観音堂の奥、昼なお暗い崖地には、「水潜寺」の寺号の起こりである「水潜りの岩屋」がある。
今は立ち入り禁止で入れないが、かつては満願を達した巡礼者たちは、水が湧く狭い洞窟を潜り抜けることで、再生の儀礼をなし、心身ともに清浄となって俗世に戻ったという。








岩屋から湧き出る清水は、観音堂脇に樋を伝わって流れ込んでいる。
「水くぐりの長命水」と呼ばれ、口に含むとその清冽さが体に行き渡る。

「結願や五体に沁みる秋の水」 たける



参道に並ぶ三十三観音は、珍しい。
結願寺ならではの企画と言えようか。
あまりお目にかかることがない「揚柳観音」、「龍頭観音」、「白衣観音」などの三十三の観音様を拝むことが出来る。
秩父札所は、三十四所だが、普通、観音霊場は三十三所である。
三十三所の三十三観音。
この「三十三」という数字は、衆生救済のために相手に応じて、観世音菩薩は三十三通りの姿に変身すると『観音経』に説かれていることに因る。
あらゆる人の悩みを救済するためにということであるから、「三十三」は「無数の」とか「無限の」という意味だと解釈したほうがいいかもしれない。
それは、「水潜寺」の本尊、千手観音の「千手」が無数を意味するのと同じことである。
観音さまは、無数の人の願いと悩みを多面多臂の姿に変身して聞き入れ解決してくれる、スーパーマンならぬ「オールマイティスーパー菩薩」なのである。


「蜘蛛の囲や朝日射しきて大輪に」 中村汀女

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