第十七番 実正山 定林寺 (曹洞宗) 08.10.20


「第十七番定林寺」の本堂は周囲を回廊が囲む宝形造り。
小さなお堂なのに「定林寺」と寺号を持つのは、ご詠歌にもあるようにかつては「林寺」と呼ばれるれっきとした寺院だったからである。








「林寺」は妙見宮の役職を勤める林家所有の寺だった。
「定林寺」は現在の秩父三十四所では、十七番札所となっているが、「第三十二番法性寺」所有の「長享(1488)番付」では発願寺の栄誉を担っている。
「長享番付」では三十四所のうち寺はわずか八寺。
残りは皆小さな堂だった。
寺の中でも妙見宮の威光を笠に来た「定林寺」が一番札所になったのではないか、というのが郷土史家の推測である。
「定林寺」はやがて林家の手を離れ、所有者が転変してきた。現在は地元桜木町の管理下にある。長らく無住だったが、今は納経所が新しく付設された。


「第十七番定林寺」で有名なのは、本堂に向かって右手にある鐘。
日本百観音の本尊を浮き彫りにし、ご詠歌を刻印してある珍しい鐘で、県の有形文化財に指定されている。
鐘というと誰も平家物語の「祇園精舎」の書き出しを思い浮かべるが、当時、日本には鐘はなかったのだと言う。
実体のない鐘の音に「諸行無常の響き」を感じ取ることができたのは、鎌倉時代の日本人に教養に裏打ちされた想像力があったからだろうが、なんとも不思議な話だ。

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